未来へ

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 …いつの間にか寝てしまっていたようだ。辺りはもう薄暗くなってきていて、秋の虫が鳴きだしていた。  「…くしゅっ…あー、ちょっと肌寒いな…」  今はもう夏の終わりとあり、この時間は些か冷え込んでくる。空には一番星が輝き始めていて、川岸の近くにあるこの土手は夜でもある程度明るく見晴らしも良いのに、意外にも人通りが少ない。  『…こんな姿を晃太になんか見られたら、“ほんと裕希は無防備だな”…なんて言われるんだろうな…。』  …こんな風に色々と考えを巡らせていたら、いつの間にか夜は深まっていて、雲ひとつない空には大小様々な星がそれぞれの光に強弱をつけているかのように、空一面を覆い尽くし、美しく輝いてていた。  …それは昔、私が晃太と天体観測した日とほとんど変わらない…むしろ全く同じような美しい輝きを辺り一面に解き放っていて、私は一瞬、時が止まったような気がした。    
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