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日々は過ぎ去り、とうとう仲間たちは暖かい地に飛び立たなければならなくなりました。
しかし飛べない鳥は空を自由に飛ぶ事が出来ないので、そのままこの地に残りました。
この地は間も無く、厳しい寒さをもたらす冬がやってきます。
更に日々は過ぎ去り、辺りは白く冷たい雪が降り積もっています。
飛べない鳥は暖かな洞窟を見つけ出し、そこで外の様子を見ながらじっと寒い冬が過ぎるのを待ちました。
ある日、余りの寒さで蹲り、ガタガタと体を震わせていると、一人の人間が洞窟に迷い込んできました。
その人間は言いました。
「君はなぜ、仲間と一緒に飛び立たなかったんだ?」
飛べない鳥は答えませんでした。
すると人間はまたこう言いました。
「ここにいると寒いだろ?
…さぁ、一緒においで?
私の家にいこう。」
飛べない鳥はびっくりしました。
なぜこの人間は私なんかに構うのだろうかと…
初めはその人間を不審がりました。
ですが、その人間の笑顔を見たら、なぜかこの人間は信用しても大丈夫なような気がしました。
飛べない鳥はとことこと人間の側まで歩いていきました。
人間はそっと手を伸ばして、飛べない鳥を優しく包み込みました。
飛べない鳥は安心しきってうとうとし始めました。その人間が与えてくれる暖かさはとても心地よく、心が休まる暖かさでした。
人間はフッと柔らかい笑みを溢して、その鳥を抱き抱えたまま洞窟を後にしました。
…外はまだ、雪がシンシンと降り積もっています。
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