第一章

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「‥佐々岡!」 「えっ、はい!」 昼休みで購買にパンを買いに来ていたところ、隼人くんに声をかけられた。 人に押されながら隼人くんのもとへ急いで行く。 (珍しいな、自分から私を呼んでくれるなんて…) 「えっと…なにかな?」 私は、はっきり言って隼人くんとは話したことは多くない。 だから少しばかり緊張する。 手で握っていた財布に汗が染みた感じがした。 「あのさ、この前の部活でハンカチ貸してくれただろ?」 「え、…あ……」 (そういえば隼人くんあの時怪我をして…… 下校まぎわで急いでたから…私、自分のハンカチで包帯代わりにしたのよね) 「ハンカチさ、血がついて汚くなっちゃったから、捨てちゃって…代わりに昼飯、おごろうかと思って。ホントに悪い…」 「え! そんな! いいよ、あんなの…ボロいハンカチだったし」 (そんなこと、気にしてくれてたんだ…) 「でも…ありがとう!」 微笑みながら、私はそう言った。 .
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