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「ちぃの?」
その声に、ハッと我に返った。
顔をあげれば、心配そうに理があたしの様子を伺っている。
「あ‥‥。えっと、ごめん。‥‥よく、聞こえなかったや。もう一回‥‥言ってくれる?」
一応にっこりと、即席スマイルも添えておいた。
あぁ‥‥―。
わざとらしっ。
大根役者にも、なれそうにないわ。
あまりの自分の不自然さに、口からはアハハと乾いた笑い声がこみ上げてきた。
「ちゃんと、聞いとけし!」
「ごめん。ごめん。はいっ。もう一回!せーのっ!!」
「えー。」
理はめんどくさそうに、唇を尖らせた。
いや、もう。
本当にめんどくさそうに。
顔を、のぞき込まなくてもわかるくらい。
そんな態度がムカつくけど。
さっきの不自然さを気にしてない様子に、あたしは小さく胸をなで下ろした。
「つ~かさぁ。俺のは、言ったから。次、ちぃのの番じゃね?」
軽く睨むように、あたしをみる。
冷たい目が、あたしに早く言えと促す。
あら、大変。
あたしにお鉢が回って来ちゃったじゃないの。
「え、えーとっ‥‥―。」
必死に逃げ道はないかと、普段まったく使わない脳細胞を叩き起こす。
瞳は、右に左にと泳ぎまくり!!
あっ!
そうだ!
「あ、あ。あたし、やるなんて言ってないもんっ。理のも、聞こえなかったし!!む、無効でしょ!?」
勢いに任せて、ついでにあたしの口にも任せた。
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