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あたしは慌てて腕を組んで、ツンと横を向けば。
理は、
「聞こえなかったじゃなくて、聞いてなかったんでしょ!!」
と、あたしを鋭く突っ込む。
冷たかった目が、更に冷たくなる。
バナナとか凍りそう。
「う゛っ。そうともいう‥‥―。」
痛いところ突かれたぜ‥‥―。
あたしは目をそらしながら言えば、理は大きなため息をついた。
「もう、いいよ。ちぃののばぁか。」
そう、言われれば罪悪感が少しだけ、胸に広がる。
白い紙に、墨汁をぽたりと垂らしたみたい。
じわじわと。
ゆっくりと、あたしの心を染める。
昔から。
昔から、そうだ。
こうやっていざこざになったときに、理に引き下がられると弱い。
「うるへぇ。」
自分の気持ちを隠すように言った言葉は、理には届かなかった。
でも、どうしても言いたくなんかないんだもん。
理には好きな人ができた。
17年間、女の子は周りにいっぱいいた。
だけど、自分からの好きな人は作らなかったくせに。
ちっちゃい頃。
あたしをお嫁さんにしてくれるって言ったくせに。
浮気者!
あたしにも、好きな人ぐらい、ちゃんといる。
あたしの好きな人は、理。
理が好き。
言えるわけないじゃん。
あたしに失恋しろって事ですか?
15才の時には気づいてたから。
約二年間の片思い。
幼なじみとして見てこなかった二年間。
それを知ったら、アナタはどう思う?
理を見れば、呑気に鼻歌なんか歌ってる。
今日は、どら猫ザエモンかよ。
あぁ~あ。
「オサムンのばぁか。」
そう言いながら、コツンとアタシの頭を理の背中に預けた。
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