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「きかんしゃコーマスがすきなの?」
目の前で、無我夢中にコーマスをいじる男の子に話しかけた。
いつもみんなに人気者のコーマスは、少しだけ傷だらけ。
胸についてる名札がちらりと見えた。
あたしと同じ黄色の名札。
きっと、同い年だ。
男の子はあたしの顔を、じっと見るとぷいっと顔を背けてしまった。
「‥‥―。」
効果音をつけるなら、ガーンって感じ。
無視されちゃった。
しかも、体ごとそっぽ向かれちゃったし。
話しかけられたら、ウントカ、スウトカ言わなきゃいけないって。
お祖母ちゃんが、言ってたのに‥‥―。
でも、あたしめげない。
あたしは大きく、息を吸い込んだ。
「きかんしゃコーマスが、すきなのっ!?」
叫ぶように言うと、男の子はびっくりしたのか。
持っていたコーマスを、カシャリと落としてしまった。
「あ、ごめんねっ?」
慌てて拾ってあげると、次の瞬間には手のひらからコーマスは消えていた。
もう、男の子の手の中だ。
なにもない手のひらを、わきわきと握ってみたりする。
グー。パー。グー。パー。
‥‥―。
視線を感じて男の子を顔をあげると、またあたしをじっと見ていた。
「なぁに?」
「おまえ、だれだ。」
誰だ?
そりゃあ、決まってる。
「おなまえはちの、そらです。ごさいです!!たんぽぽぐみです!!」
パーを男の子に突きつける。
挨拶はいっぱい、練習してるから得意だもんね。
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