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とても大きく、年期のはいった古い家の縁側に、
一人の少女が座っていた。
少女の手には、直径20cm程の鏡が握られていた。
膝に置かれ、仰向けになっている鏡には、
夜空に浮かぶ満月が映っていた。
「水鏡の神よ。我の声に応え、我が願いを叶えたまえー―」
鏡と同じように夜空を見つめていた少女は、
不意に鏡に視線を移すとそう呟くように口にする。
沈黙…。
静寂だけが辺りを包み込んだ。
「はぁ…。」
暫く鏡をじっと見つめていた少女は、
何も変わらぬ周囲の様子に溜め息を漏らした。
「そうよね…。
いくらこの鏡が水鏡の神を宿したとされる御神体でも、何も起きないよね。
仮に本当に神様が宿っていたとしても、
神様だって引っ越しするだろうし…。
それに…。」
少女はそこで言葉を区切り、また空へ視線を戻す。
頭の中にいつかの祖母の声が蘇ってきた。
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