再起―フタタビ―

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「あ~!やっと着いたぁ!」 慎は塔に入るなり叫んだ。声が遠く響く。周りを見渡すと以前戦争しに来た時とはガラリと違っていた。なにより暗くない。少し安心感を感じた。 「お、来たな慎」 前から声がし、振り向いた。一樹が慎を呼び掛けていた。 「おう一樹。真逹は?」 慎の言葉に一樹は上を指差した。上層部にいるのだろう。昇らなくてはならないと思うと気が遠くなった。 「エレベーターがある。こっちついて来い」 一樹の言葉に慎は救われた様な顔をした。早速付いていき、エレベーターに乗り込んだ。 「もう皆来てるぜ?お前も入る場所が悪かったな。あ、そだ。鍵貸してくれ。しなきゃなんねぇ事があるからな」 慎は何かと疑問を持ちながらも聞かないまま一樹に鍵を渡した。エレベーターが到着の音を鳴らす。もう上層部に着いたのだろうか。扉が開き、廊下を歩く。真っ直ぐ行った所には立派な扉が構えていた。 「慎が来たぞ~」 一樹が到着を知らせながら扉を開けた。中は広間でソファーが置いてあった。そこには優、優弥、早紀、ディン、そして真の姿があった。 「久しぶりだな、慎。また会えて嬉しいよ」 布を巻いたままの真が慎に挨拶をした。慎は同じ様に返事を返した。慎はソファーに座た。真は一段高い椅子に座る。 「さっそく始めよう。慎逹には悪かったが、こうなった以上手伝ってもらう」 真が話を切り出した。全員ソファーに座りながらも視点は真からそらさない。久しぶりに皆が真剣になっていた。 「手伝って貰いたい事は山程あるが、実際にやってもらうのはその1つだ。それは俺達が探しているドッペルゲンガーの捜索」 「捜索?殺さなくていいの?」 優が機敏に反応した。確かにそこは重要である。 「出来れば確保してほしい。だが難しいだろうな。殺しは相手の出方による」 そこまで用心するという事はかなりやり手とドッペルゲンガーなのだろうか。 「悪いけどとりあえずそのドッペルゲンガーの事を教えてくれないか?一番気になる所だし、重要だろ?」 優弥が切り出した。慎逹もそれに賛同だった。いつ、どこに現れるかさえ分からないからだ。 「分かった、そこから説明しようか。そのドッペルゲンガーはオレがまだギルディンに保護される前に接触したんだ。容姿は赤髪の長髪、武器は剣だろう。そして…」 慎逹は沈黙した。続きの言葉が信じられ無かった。まさかそんな事があるとは、と。
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