再起―フタタビ―

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「…おそらく、鬼人より強いだろうな」 慎逹は沈黙した。強者のドッペルゲンガー逹を従え、慎と真が必死で殺したドッペルゲンガーを凌ぐ可能性のある奴がいるというのだ。 「なんで分かるんだ?真さん」 優弥が冷静に聞いた。鬼人を直接は知らないものの、恐ろしさは二重身殺し逹であるならば知っているはずだ。 「ドッペルゲンガーの本能…みたいなものかな。ソイツの目を見た瞬間に感じたよ。ああ、格が違うってな。それに比べたら…鬼人は少し…本当に少しだけなのだが弱いと感じたんだ」 ドッペルゲンガーの本能。二重身殺しである慎逹には理解出来なかったが真がそう言うなら信じる以外他無い。なにせドッペルゲンガーが仲間にいるなど前例に無い。今回は真を信じ、皆で行動する事になるだろう。 「頼む…力を貸してくれ。オレはこの世界を平和で包みたいんだ!」 真が床に頭をつけて頼み込んだ。 「オレからも頼む。オレ等だけじゃ手におえねぇんだ…見つかりさえしねぇ」 ディンも真の横で頭を下げた。慎は笑い、頭を上げるように言った。 「何当たり前の事言ってんだよ。オレ等はその為に来たんだ。任務なんて久しぶりだしな。任せろ、オレ等に頭を下げる必要なんてねぇ。下げるのは死んだ時にとっときな」 真とディンの顔に笑いが浮かんだ。優、早紀、一樹、優弥も慎の言葉に頷く。 「そう言ってくれると思ってたぜ」 ディンはニヤリと笑って慎の背中を叩いた。 全員の顔つきが一瞬にして変わった。真が指揮をとり、声が部屋中に響き渡る。 「それでは組んで探してもらう! 優、早紀はオレと街の警備と捜索を! 一樹、優弥は街の外を警備、周辺を捜索! その2組は仲間のドッペルゲンガーと協力するように!仲間は首や腕に『DOPG』と刺青をしているので一目で分かるはずだ! 慎、ディンは街の外へ行ってもらう!何かあったらすぐに連絡をいれるように!」 今までとは違う、攻撃の態勢。気を抜くことは許されないだろう。 「全員すぐに任務を開始だ」 数十分後。 街の外に慎とディンは立っていた。 慎は座りこみ、靴紐を強く結ぶ。ディンは左腕を弄くっていた。 「ディン…」 「あん?」 「お互い生き残るぞ」 ディンはその言葉に思わず笑みを漏らした。 「オレの台詞だ!パクんな!」 2人は覚悟を決め、街を後にし駆け出した。
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