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かれこれ街を出て、3時間程たっただろうか。
慎とディンはひたすら荒野を歩いていた。日が照りつけて体力を奪う。
ディンの話によるとコチラでの3日が人間界での1日。つまり72時間こちらで過ごせばやっと人間界での24時間となるのだ。コチラでの3日のうち、1日が夜に変わる。季節が無く、場所によって異なるらしい。人間界より時間は規則性だが、季節は一定という、不安定な世界だった。
「あちぃ~、やっと街が見えなくなったな…」
「我慢だ我慢。んな事でくたばってたら別の街に着く前にドッペルゲンガーにやられっぞ?まだ3日はかかるからな」
ディンの言葉に慎はうなだれた。気が遠くなる。日陰が無いかと周りを見渡した。
「期待しても何もねーぞ。少し行けば谷がある。そこを抜けりゃ街だ。運がよけりゃ『DOPG』の奴等が迎えに来てくれるさ」
刺青の入ったドッペルゲンガー。そもそも慎にはドッペルゲンガー逹が手助けをしてくれる意味が分からなかった。
「『DOPG』って…何なんだ?」
「ドッペルゲンガー・ガーディアンズ。『DOP』はドッペルゲンガーを、『G』はガードを表す。この世界を守る為にドッペルゲンガーによって構成された部隊だ。鬼人が消えた後、お前と真が思っていた様に『パートナー』として人間を思う事を説明したんだ。そしたら意外にもかなりのドッペルゲンガーが同意してオレ逹を手伝ってくれたのさ。少し不安定な本物を失った奴等まで、な」
慎はまるで夢を見ているかの様。ドッペルゲンガーと人間は分かり合える。再びそれを確信した。
「鬼人も厄介な奴を残してくれたもんだな」
とある暗い建物の中。無数の声がする。
「アイツ等につくなんて…バカなドッペルゲンガーもいるしなぁ」
「ソイツ等なりの答えだ。敵についた以上容赦はしない。正義は我等だけだ」
「敵に回れば、だが。問題は神野 慎のドッペルゲンガーだ。意外にも統率力を持っている。本物は…所詮成り立ての一兵士だろ?」
「でも鬼人はその慎にやられたんだぜ?まぁ真がいなけりゃ鬼人に殺されてたけどな。早目に摘んどいた方がいい」
「鬼人の兵…少し試してみるか」
「もうほぼ全員死んでるぜ?生き残ってんのは死に損ないだろ」
「関係ないな。それに奴等も動き出したようだ。私等の邪魔をしない事を望もうか」
「そろそろ解散にしましょう。また皆の顔を見れることを楽しみにしてますよ…」
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