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「あ~!」
早紀が高い声で叫んだ。どちらかと言うと見つけた時に叫ぶ声で無く、残念そうに叫んだ様に聞こえた。
「何いきなり…?驚いたじゃない」
優が心臓に手を当てながら早紀に聞いた。早紀は泣きそうな顔をしながら優の方へ向いた。
「真さんの依頼じゃ報酬出ないじゃないですかぁ~…」
優は一瞬何の事?と思ったがすぐに呆れた。
「あのねぇ…世界とお金どっちが大事よ…?」
「選べないですよ!両方大事です!」
早紀は真剣な顔をしながら『ウ~』と唸っていた。優はここまで早紀がお金にがめつい事を初めて知り、呆れた。
「安心しろ、オレは報酬くらい払う。コチラの世界の通貨は向こうと同じにしてあるから払えるさ」
早紀は泣くのをやめて元気を取り戻した。尻尾を振る仔犬の様に真の手を握った。すでに早紀は目が¥(ゼニ)になっている。
「てか意味あるんすか?街の外誰も居ないッスよ」
一樹がブツブツと文句を言いながら歩いてきた。優弥は隣でフゥとため息。
「ご苦労、居ない方がいいだろ?慎逹が危険になるけど…あの2人なら大丈夫だろ。それにドッペルゲンガーの能力で入ってくるっつ―可能性もあるしな」
ドッペルゲンガーの能力。太刀打ちが出来るか心配になる程想定外のものまで存在するものだ。
ピリリッ
真の携帯電話が鳴った。真はポケットから一風変わった携帯電話を取り出す。
「なに?分かった今すぐに!」
真はパタンと携帯電話をたたむ。
「全員街の中を再点検してくれ!!上級ドッペルゲンガーの反応が数個あったらしい!数は不確定だが3!用心する様に!」
全員はそれを聞いて、全方向へと分かれ駆け出した。真も走り出し、街を駆け抜ける。
「チッ…どこだっ!?」
真は焦りながら駆ける。どこから侵入したのだろうか?何が目的なのだろうか?疑問が溢れ続けた。皆が無事であるように。祈ると同時に真は立ち止まり、神経を研ぎ澄ました。
「ふぅぅッ!…どこだ…?」
目をつむり、息を整える。
ドッペルゲンガーの生態は未だに不明。ドッペルゲンガーである以上、人間とは異なった『何か』を持っている。真はそれに頼り、位置を探そうとしているのだ。
「…ミツケタッ!」
真は叫んだ。駆け出そうとするが立ち止まる。
「この位置は…?まさか…?」
真は考え、疑問を抱きながらも駆け出した。
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