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「さっきは…居なかったのに…」
早紀は驚き、絶句した。街中に堂々と上級ドッペルゲンガーが立っていた。
いや、立っているだけでなく、周りにいた本物逹を失った下級ドッペルゲンガー逹の魂を天に還しているように見えた。
「や…やめなさいっ!」
優は短刀を持ち切りかかった。
ドスッ
上級ドッペルゲンガーは下級ドッペルゲンガーを手で持ちあげ、短刀は刺さる。仲間を盾扱いか。
「どうか…しましたか?」
ドッペルゲンガーは不敵に笑い、優に語りかけた。優はその不気味さに鳥肌がたち、思わず後ろへ引いた。
「な…なんなのよ貴方は!?」
「見た通り…ドッペルゲンガーですが?」
2人は馬鹿にされ甘く見られている。ドッペルゲンガーは下級ドッペルゲンガーから手を離した。
「あぁ…貴女逹ですね。神野 真が呼び寄せた二重身殺し逹は。初めまして…私の名前はエルウィン・アレイド」
銀の長髪が光り、細い目の中の銀の瞳が2人を見つめる。舌で口元をペロリと舐め、エルウィンは頭を下げて紳士的な態度を見せた。
「嫌な奴を思い出すわね…貴方もキレたらヤバそう」
優は身震いをし、エルウィンに短刀を構える。早紀もすかさず針を腰から取り出した。
「…あぁ、セリムですね。貴女が殺したのですか?それは礼を言わねばなりませんね」
エルウィンは武器を出す素振りさえ見せなかった。武器を持っていないのだろうか?それとも隠しているだけなのだろうか。
「…どういう事?」
「セリムは…昔、我々と共に行動してました。見た通り欲の深い奴でしてね…自分が欲しいものは直ぐに手に入れたいのだと思います。
彼は我々を裏切り、鬼人についたのですよ。まぁ我々にとっては彼はいらないも同然でしたがね。ただの…邪魔でしたから」
エルウィンは最後を強調した。2人は一瞬で理解する。エルウィンは普通じゃない。
「我々って…どうゆう事ですか?」
「貴女には関係ありません」
早紀はエルウィンに見向きもされなかった。興味が無いのだろうか。
「まぁこうして会ってしまったのは運命。貴女逹を消さねばなりません…」
そう言ってエルウィンは腰から細い剣を取り出した。前に構え、また舌でペロリと口元を舐め、静かに泣き始めた。2人あまりの事に驚きながらもは構えた。
「…貴女逹のとてもいとおしくも哀しい運命。ここで断ち切って差し上げましょう!」
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