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「全員無事の様だな」
塔の正門前に立っていた真は皆を見て安心する。優弥は余裕の笑みを浮かべ、一樹は未だに呆然。優は傷口を押さえながら笑い、早紀は周りを警戒していた。
「セフェラン。ありがとうな」
「礼には及びません。それより…ディンさん逹が心配ですね」
慎とディンは離れた所にいる。自分逹は助ける事が出来ない。無事だと信じるしか無かった。
「真さん、これ」
優弥は鍵を渡した。先程の名も知らないドッペルゲンガーが持っていた鍵。真はそれを見てまずい、と言いたげな顔をした。
「回収するの…忘れてた。あとでまた行こう…」
「真さん臭いから近づかないで」
早紀がさりげ無く酷い事を呟いた。真は少し傷付いた様な顔をした。一時の冗談。それもまた悪くない。
慎逹は無事だろうか。
「なんだアイツ?」
「いや…ドッペルゲンガーだろ。そんくらい判れよディン」
谷の中。上は崖。下には足場が何十も見られ、戦うには問題無い。前方にはドッペルゲンガーが見えていた。
「神野 慎…ディン・ウェルキアス!上物だぁ!」
ドッペルゲンガーは狂い叫んだ。手には写真付きの紙が何枚か見られた。おそらく慎逹の写真だろう。ドッペルゲンガーの手配書みたいなものか。
「さっそく殺そう!ブッ殺そう!ヒヒヒッ!」
ドッペルゲンガーは狂っているように見えた。容姿は肌黒く、ドレッドを垂らしていた。体は鍛えられている様に見えた。
「アイツ…ディン並にやべぇんじゃね?」
「…オレはあんな怖くねぇよ。頭おかしくもねぇ―し。まぁどいてろ。オレがアイツ殺してやる」
ディンは背負っていた馬鹿でかい物を構えた。大剣の様なものだが刀身は長方形の機械で刃が無かった。柄は至って普通。相手を斬れそうにない。斬るというより殴るのが正しいのかも知れない。何なのだろうと慎は思った。
「オレの新しい武器だ。これすげえんだぞ」
「言うだけじゃわかんねぇって。んじゃオレは下がってるよ」
慎は少し離れる。ディンとドッペルゲンガーが睨み合う。ドッペルゲンガーはニヤリと笑った。
ザッ…
背後から足音。慎は振り向いた。
「君が神野 慎…ね。ふぅ~ん」
ニヤリと笑い、慎に近づく。男はまだ若い。黒の短髪の青年。
「それ以上近づけば容赦無く斬る」
慎は抜刀し、前に構えた。これはアパートから拝借した名も無い刀。
「血の気が多いな…。これだから嫌なんだよお前等、いっぺん死ね」
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