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慎と早紀の前には茶髪で緑の瞳をした男性が立っていた。時間はあまり経っていないのに物凄く懐かしさを感じさせる。
「ディン…!久しぶり…だな」
2人は驚き口を金魚の様にパクパクさせた。
「なんか冷めてんな~。感動の再会なのによ」
「感動はしねぇさ。驚いたけどな」
慎はディンの左腕の異変に気付く。セリムに斬られ、無くなった筈だが、黒い布が巻かれて腕の様な形をしていた。
「その腕は…?」
ディンは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに気付き、自慢気に答える。
「ああ…これは義手だよ」
巻いていた布を取りながら言葉を続けた。中からは鉄の様な物で造られた腕が肩に繋がっていた。
「アッチの世界の技術でな。魂を食べずに、迎えたドッペルゲンガー達がいてよ、その中に学者みて―な奴がいたんだ。ソイツに作って貰った。筋肉に連結させてる」
そう言って義手の指を器用に動かした。2人は見とれるようにその腕ばかり見ていた。
「それで…何用なんですか?」
早紀が呆れた顔をしてディンに聞いた。面倒事を持っている事など予想出来たからだ。
「…仲間なんだからもうちょっと態度よくしてくれたって…いいじゃんよ」
ディンが少し困った表情をしても、早紀は表情1つ変えない。過去を知っているとこんなものなのだろう。
「いや…実は手伝って貰いてぇ事があってよ。手伝ってくれるよな?」
真の予想は的中。早紀は溜め息をつきながらディンを睨んだ。慎はその中でも少し乗り気だった。
「まぁそんな顔すんなよ…。実はな~…真が心配事があるんだとさ」
「え…?」
慎は素早く反応した。真の事が気になっていたのだ。ディンはこれまでの経緯を話した。
「つまり…確証無しの謎のドッペルゲンガーがいると。面倒くさそう…」
ディンは少し気まずそうに頷いた。早紀は未だに不機嫌だ。
「…いいですよ。それが私達の仕事ですしね。真さんにも会ってみたいですし。報酬はたっぷり頂きますけど」
早紀の顔が笑顔に変わった。慎は早紀の言葉に頷くだけだった。自分でもそれは望んでいた事だから。
「じゃあ明日にでも来てくれ。真とアッチで待ってるぜ」
ディンはそう言い残し、扉を開き消えた。
「報酬…って何?」
慎は早紀に素朴な疑問をした。
「戦争の時…貰わなかった?」
その言葉に慎は固まった。新事実発覚だ。冷たい風が2人の間を吹き抜けた。
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