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慎は家に帰り母親の元へ駆けて行った。
「オレの通帳は!?」
「どうしたの慌てて?通帳って…何に使うの?」
母親は驚き振り向く。早紀の話によると報酬は自分の口座に勝手に振り込まれているらしい。どうやって調べているのか知らないが、与一の上にまだ上官がいて、その人達が金を提供するらしい。どんな大富豪なのだろうか。
「はい。変な事に使わない事。一体何に使うのよ?」
母親は用途を聞きながら通帳とカードを慎に手渡した。
「バイトしてたんだよっ。給料とりいくの忘れててさ!」
正直、バレバレの嘘かもしれない。そう言って慎は家を駆け出した。
「え~と…番号は…と」
通帳とカードを入れ暗証番号を打ち込んだ。金額が表示される。慎は何度もケタを数え直した。
「…マジかよ?」
『\2000000』
「…200万も!?」
慎は驚きのあまり叫んだ。銀行にいた人々が一斉に慎の方を向く。元の貯金が20万。合わせて220万。高校生が持っていい金額ではない。
しかし考えてみれば当たり前なのかも知れない。命をかけて戦っている。ましてや戦争に出陣し、敵の大将を殺している。これだけでは足りないとも言えるだろう。
しかし慎はこの半分でも満足だった。
「こりゃ…とりあえず…20万引き出して適当に使おうかな…♪」
周りに警戒をしながら20万を引き出し、財布の中に入れた。使い道に困るものだね。
夜になり、ベッドで横になって雑誌を読んでいると携帯電話が鳴った。着信。画面には『柳 早紀』と写っていた。
「…なんだよ」
「…どうでした?お金」
金の話題。当然だ。それ以外に理由は無い。明日でもいい事だが、早紀は何気、金にがめつい。
「メールでもいいじゃねぇか」
「いえ…メールでは言いにくい事があるので。センターに残ってしまいますしね」
ドッペルゲンガーの事か。そう言えば分かる。
「…他の奴等は?」
「優はこちらに、羽村さんはいません」
ゴクリと息を飲む。何の話か予想がつかないからだろう。
「上からの指令…いや忠告です。ディンが言っていたドッペルゲンガー。本当にいた様です。目撃がありました」
慎は額の汗を拭いた。久々の事に緊張をしているのだ。息も段々と荒くなる。
「そして忠告です。神野さんは信用出来るので言います」
慎は早紀の言葉が一瞬理解出来なかった。
「仲間に気をつけろ」
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