第一話 ネコが来た

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 第一話 ネコが来た

 のれんを店先に掛ける。  「居酒屋 ありがとう」  この名前は父が付けたものだ。  その父が「おれはビッグになる」と2年前に蒸発して以来、店は母がや一人できりもりしていたのだけど、その母が2週間前に過労で倒れ、店を営業することができなくなってしまった。  母は店を閉める事も考えた様だったが、わたしはこの店が好きだった。  生まれてからずっとこの店にいたと言う事もあったけど、わたしは「ありがとう」集まってくる人々が好きだったのだ。  だから、わたしは母に自分が店をやると伝えた。  最初、母は反対したが、わたしの決意に根負けしたのか、それともしばらく店をやってみれば、その大変さにわたしが気がつき、店を続ける事を諦めると思ったのかもしれない。  とにかく、店は私が再開する事になったのだ。
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