第二話 『三味線になった』

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 店が開いてから3時間も経つと、他のお客さん達もやってきて、カウンター六席、テーブル席二つしかない「ありがとう」の店内はギュウギュウ詰めになった。  「イズミちゃん、ビール二つ!」  「はい!ただいま」  わたしは忙しく狭い店の中を動き回る。  シロも額に汗しながら焼き物を焼いている。  店を休んでいる間、店の中は暗くジットリとした空気が満ちていたけど、今、店の中は明るく、熱気に満ちている。  わたしはこの空気が好きなのだ。  「ありがとう」  最後のお客さんが店を出た。  最後と言っても、サバじいはまだいるのだけど。  「サバじい、そろそろ閉めるわよ」  「もうそんな時間か…楽しいと時間が過ぎるのが早いね」  「サバじい、ずっとビールを飲んでいるのに、ちっとも酔わないのね」  「俺は死人だからねぇ…」  そんな事をサバじいは笑いながら言った。
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