君に捧げるシューゲイザー

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       また、眠れない日だ。    俺は毛布と羽毛ふとんを重ねて掛け、ベッドに伏せていた。今日は酷く寒い。   「あー、眠れん……」    小さな部屋の冷たい空気に、俺は意味もなくそんな言葉を放つ。声は夜の静けさのなかで間抜けに響き、俺はむなしい気分がした。    眠れない日というものがたまにある。理由も分からないのに眠れない、という日。テストの前日だって学園祭の前日だって眠れるにも関わらずだ。  1日を振り返ってみても、別に授業中に居眠りをしていたわけでもないし、寝る前にコーヒーを飲んだわけでもないから、心当たりがない。なのに、眠れない。そんな不思議な不愉快が、いつからか多くなった。    時計を見ると、1時を過ぎた頃だった。明日(厳密には今日)は起きれるだろうか、と少し心配になる。    そういえば眠れないときはホットココアを飲むといいらしいな。そう考えた俺は、布団から出ようと思う。    そこでもう1つ考えが浮かぶ。もしここで布団から出たらせっかくの温かさが奪われて、それこそ一撃死ではないか。このまま寝つけるのを待った方がいいんじゃないか。    が、もうその時点で部屋の冷気は布団と俺の隙間に割って入っていた。あきらめた俺は寒さをこらえて布団から出て、台所に向かった。    ココアの粉を探して、台所の棚を手さぐりで探す。程なくして、ココアが無いことに気付く。あきらめて部屋に戻った。  部屋に戻ったところで、眠る気にはなれなかった。すると逆に心はアグレッシブになって、俺は意地でもココアを飲みたくなった。私服に着替えコートを羽織り、家を出た。    2月の寒い盛りの夜は、冷蔵庫にぶち込まれた見たいに寒かった。ひとたび風が吹くたびに冷気の針が安物のコートを貫いて体に刺さる。田舎町はしいんと静まり返って、月と星とわずかな街灯が輝いていた。    近くの自販機は、確か近くのレンタルビデオ店のところだったな。そう考えながら街灯の光の下でふうと息をつくと、吐息が白く浮かび上がる。寒さに震えながら、俺は冷えたアスファルトをてくてくと歩いた。    数分でレンタルビデオ店についた。俺は入り口前の自販機に歩み寄る。    と、自動ドアの向こう、店の中に、見知った顔を見つけた。  
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