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「あ、東雲君。良かった。あんまり遅いから、やっぱり用事があって帰っちゃったのかと思ってたよ」
「あ~、細川まで待っててくれたんだ。ありがとうー………って、さぶ」
律儀に待っていてくれた細川を一瞥しつつ、校舎外の爽やかな空気を取り込もうとして、震えた。
まだ秋だというのに、なんなんだ、この寒さ。開かずの扉の先の空気。それを身体中で吸うのが俺のひそかな楽しみの一つだったのに。昼過ぎから、急に気温が下がったみたいだな。
細川も寒そうだ。微かに身体が震えている。
「そんなに寒いか?俺は全然なんだけど。お前ら寒がりなんだな」
平然とした顔の大中を細川と二人で凝視する。それから細川と見つめ合って、二人同時に、苦笑い。
「いや、これはさすがに誰でも寒いと思うよ。風も強くなってるみたいだし」
「っていうか大中が平気なのは身体鍛えてるからだろ。俺達普通のもやしっ子に、お前と同レベルの代謝を求めるのは酷ってもんだ」
口々に反論を返された大中はさすがに決まりが悪そうに、頭をかいた。
「んじゃあこんなとこでだべってないで早く行こうぜ。図書室。あそこなら暖かいだろ」
なるほど。道理だ。
と、いうかさっきから遅々として、先に進まないのは俺のせいだろうか?
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