一章

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「ふおぉお、ここが【この世の楽園】《エデン》か!!全身をくまなく包みこむ至高の温もりはまさしく人を駄目にするという………!」 図書室、それは学舎において唯一心安らげる場所。今も凍えた俺達を優しく迎えてくれ―… っいてぇ! 図書室の偉大さを讃えていた俺の後頭部を、突然の痛みが襲った。 っ、この痛みは………! 「馬鹿な事言ってんな。少し静かにしてろ」 予想通り、背後には平手を打ち下ろした格好で、仁王立ちする大中がいた。 ………拳じゃないだけまだマシだったか。それにしてもいてえ。 「二人とも、勉強してる人に迷惑だから、騒いじゃ駄目だよ」 「騒いでたのはコイツだけだろ。俺は黙らせただけ」 「騒いでたんじゃないよ。讃えてだけ。図書室の偉大さを」 順番に、溜め息をつきつつ細川。苛立たしげに大中。いじけながら俺。 「とまぁ、冗談はさておき、とっとと席を確保しにいきますか」 「………そうだな」 まだ何か言いたげな大中を制して、図書室の中程に進んでいく。 まぁ、あのまま突っ立ってると本当に邪魔だし。なにより今日の大中は、いつも以上に冗談が通じない。
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