一章

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「じゃあ、落ち着いたところで、そろそろ始めようか。僕、ちょっと必要な資料があるんだけど、皆はどうする?」 参考資料か………基本的に、詰め込み式の暗記でテストに臨む俺には必要ないかな。授業で見聞きした範囲をそのまま記憶すれば、まぁ最低限の点数は取れるだろうし。それにどうしても理解出来ないところは、細川に聞けばいいし。 「ん~、俺は別にいいかな。そんなに根詰めてやる気はないし、最低限の暗記が出来れば、個人的には満足だしな~」 「そっか。じゃあ二人とも先に始めててよ。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」 「はいは~い」 立ち上がった細川に軽く手を振って、教材と筆記用具を準備する。まぁ、まずは見て覚えるタイプの俺は、あまり筆記用具を使わないんだけど……… なんて考えてたら、隣から椅子を引く音が聞こえた。大中だ。 「………どしたん?」 「いや、俺も細川と一緒に資料を探すことにした。あいつの言うことは参考になるし、手伝いがいた方が本探しも楽になるだろ」 まぁ、一理ある。それなりに図書室は広いし、目的の本を見つけるには人手が多い方がいいだろうな。 「ま~、それもそうか。じゃあ俺も手伝うよ」 「三人全員行く必要はないだろ。お前はまぁ、待ってろよ」 腰を浮かしかけたところで、待ったをかけられた。訝しんで大中を見るも既に、書架にその大柄な体を隠すかのようにさっさと姿を消すところだった。 ………なんか、疎外感? 仕方なく俺は、一人でもくもくと暗記作業を始めるしかなかった。むなしい。
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