一章

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軽快に意識が船を漕いでいる半ばに、途切れ途切れに担任教師の声が聞こえてくる。 「じゃあ特に連絡もないし、今日はこれまで。中間テストも近い事だし、授業内容の復習だけは忘れないように。 じゃあ、今日の日直は………と。田島と西野か、よろしく。」 なんて暢気にうつらうつらとしていたら、既に連絡事項まで来ていたみたいだ。一日の終わりを区切る恒例行事の為に、一気に意識を覚醒させる。 「起立、礼」 クラス中の生徒が一斉に立ち上がり、行儀よく礼をする風景にやや取り残されつつも、皆の動きに追従する。 半テンポずつ遅れながら行動する自分は傍から見たら、さぞ滑稽だっただろう。うっかりうたた寝なんぞをしていたのも、バレバレだったかもしれない。 でもそんなそぶりをおくびも出さず、着席する。こういう時は堂々としていたほうが逆に怪しまれないものなのだ。 「~あふっ」 ………それでも欠伸だけは隠すことなく出てしまうのは愛嬌ということで。
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