一章

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細川から目線を隣にやると、組んだ腕の半ばで指をリズミカルに叩きつつ、俺を見下ろしている大中が視界に入った。 ………苛立っていらっしゃる。 「お前が行かねぇなら、俺と勉の二人で行くから、別にいいんだけどよ。じゃ、行くか勉」 っ!やべっ。 鞄を持って踵を返そうとする大中に慌てる。二人に誘われて、断る訳がない。有り得ない。一人はつまらないジャナイカ。 「ちょっ、ちょい、俺も行くって。別に用事なんてないしさ」 鞄をもった大中は歩みを止めると、肩越しに視線を投げかけると、ため息まじりに呟いた。 「じゃあ始めからとっととそう言えよな、面倒くせぇ。ほら、早く行くぞ」 「あっ、待って大中君。じゃ、じゃあ東雲君も、一緒に、早く行こうよ」 呟いたそのままで、さっさと先を急ぐ大中の後に、小走りで細川が追い掛けていく。 下校時間で賑わう教室に俺だけが取り残された。 ………なんか今日はやけに突っ掛かかってくるような。機嫌でも悪いのか、大中。 昼飯にでも当たったのかな?何て、また思考の海に入りかけた。 こんなことしていたら、また大将のご機嫌を損ねちまうな。 本日の教材から趣味の文庫まで、置き勉を良しとしない不必要なこだわりで、必要以上にキャパシティを圧迫されたリュックを背負う。 今日も中々の重量だ。帰宅だけの予定から、ルート変更。目指すは図書室だ。 俺は二人を追って、教室を後にした。
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