空き巣にご注意☆(その1)

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 かちゃかちゃと音がしたあと、女子寮の一室のロックが、静かに開く。 「こんにちはー」  などと言いながら、俺はピッキングの道具をコートのポケットに仕舞い込む。  空き巣なんてのは簡単なもんだ。あとは通帳か金目のものを物色するだけでいい。  土足でフローリングの床に第一歩を踏み出す。 「……誰?」  ふいうちだった。  全身の毛が強張る。  突き当たりの部屋――おそらくリビングだ――から見知らぬ女が顔を出したのだ。  まずい。  非常にまずい。  住人と鉢合わせるなど、自称空き巣のプロとしてあってはならないことだ。  慌てて後ろ手でドアノブを探す。痛い。ノブに手をぶつけてしまった。  痛みを堪えて思い切り掴む。しかし、冷えた汗で滑ってしまう。失敗に焦りながら、三度目でようやく捕まえた。  だが俺は、外には出られなかった。  ドア越しの共通廊下で、馬鹿笑いする女子大生たちの声が響いているのだ。四人はいるだろう。まだ目の前の一人を突破するほうに逃げ道はある。 「誰かいるんでしょう? 誰なんですか、答えてください」  ふらふらと、どこか安定性のない足取りで、廊下の壁に手を這わせながら女は歩いてくる。目を瞑ったままだ。
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