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空き巣にご注意☆(その4)
「どうですか?」
女の声で俺は思考をふり払った。駄目だ。空き巣になった理由を忘れたのか?
すぐに引き出しのなかを確認すると、判子と――預金通帳があった。躊躇いながらもそいつらを乱暴に懐に仕舞う。さらに金になりそうな物品を素早くチェックしてから、俺はふてぶてしく口を開いた。
「ないですねぇ、判子」
すると女は残念そうにため息をつき、耳の後ろへ黒髪をかきあげた。
俺の偏見だろうが、目が見えないとは思えない色っぽい仕草だった。離れているのに石鹸の香りが漂ってきそうだ。
「い、いかん……」
呆然と立ち尽くしてしまったことに舌打ちする。中学生じゃあるまいし。
「ど、どうしましたっ?」
俺の吐き捨てるような独り言に、盲目の女は過敏に反応した。心配げに近寄ってくる。
「なんでもないですよ。――っと、と!?」
「あ、ごめんなさ――っ」
彼女の歩みは止まらず、そのまま俺と接触。その反動で俺は苦悶を、女は小さな悲鳴をあげて倒れこむ。
女が、俺の上に覆いかぶさる形でだ。
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