煌めくのさ

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 先輩が言った台詞が右耳からこぼれ落ちた。プールには波紋がキラキラと広がりを見せる。それはまるで、宇宙を反射したみたいな不思議な色に思えた。何色にも例えられない夏の不思議は、僕らの季節の匂いになって、脳みその海馬に閉じ込められる。  瞬間冷凍みたいな感じだけど、本当のところどうなのかな。去年の夏や一昨年の夏を僕はさほど区別ができないのだから、おそらく大人になってからひょんなコトで解凍された時。粗雑に閉じ込められたこの記憶は――とてつもなく曖昧で信憑性のない、神秘的な、言葉にするとすれば……『青春』とやらになるのかも。  太陽の熱を吸収したコンクリートタイルが足の裏に広がっている。そしてその表面を木漏れ日がざわざわと揺れ動いているのは、僕が今眩暈を覚えているからそう見えているだけかも知れない。  なんせ僕の個性はいたってクラスメートと同系色で。つまり、眩暈の由来はこれだった。  熱くなりすぎたり、冷たくなりすぎたりしない。まあまあそれなりの毎日を送っている。適度なところがオイシイのだ。いじめる奴にも、いじめられる奴にもなりたくない。何にも属したくない。自由でいたい。  そんな僕の憧れだった先輩の裏の顔を、僕はたった今目撃してしまった。眩暈の原因はこれだ。眩しすぎる真夏の日差しが、僕の心臓をちりちりと焦がすんだ。
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