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「ダメでした?」
「僕、今風邪気味…」
「ええ、だから俺がその林檎買ってお見舞いに来たんですけど…」
「そうですけど、そうじゃなくて…けほ…ッ…」
「大丈夫ですか?……あ、もしかして成瀬さん風邪がうつるって言いたかったんですか?」
「そうです…」
わかってるのなら…、と成瀬さんは口を尖らせながら林檎の齧り口をなぞる。
「馬鹿ですね…成瀬さんは…」
「はい?」
成瀬さんの林檎を握っている手に、自分の手を重ねる。
目線は、赤い林檎。
「…俺らはもう数え切れないくらいの禁断の果実を
食べてきてるんですよ? 風邪に侵されるくらい、
俺ら侵している罪の大きさに比べたら…恐れるに足りませんよ」
「芹沢さ…」
毒の旨味を知ってしまった俺は、貴方の身体から溢れる蜜という名の毒を舐め取り、その毒に侵された頭で貴方に囁こう。
禁断の愛のコトバを。
「愛してるよ、領」
(貴方の存在が、毒。)
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