高木雄大 11

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 握りしめられた由夏の拳にそっと触れる。  強張って固い右手の指の一本一本をほどいて、俺の指を絡める。  俺の手も震えていた。  祈るよ、由夏さん。  いつでも祈るよ。  世界のすべてが、あんたに優しくあるように。  由夏の左手が、ためらうように俺の涙に触れる。  そっとなぞられた唇の輪郭が、熱を持っていた。  手のひらを口元にあて、俺の呼吸を確認するように、息に触れている。  ――声に、触れている。  あぁ俺は今、初めて由夏に抱かれたのだと思った。  不器用な、その手に。 「クリスマスプレゼント、受け取って、由夏さん」  ずっと、シビックのダッシュボードに入ってるんだ。  指輪、なんだよ。  受け取って。  今度ははずさないで。  はずさせないから。
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