null――prologue――

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時刻は真夜中。 人も草木も眠りに付き、静けさだけが辺りを包む。 沢山の建造物が建ち並ぶ中、一際大きな建物から突如として光と音が溢れ、静寂は一瞬にして破られた。 「泥棒だー!!『天使の微笑み』が盗まれたー!!」 続いて硝子が割れる音とともに一台の車が飛び出してきた。 その後ろには、追い掛けて来たのだろう、幾人かの影が見える。 しかし車の速度に追い付ける筈もなく、内数人は駐車場へと駆けていった。 人々を置いてけぼりにし敷地内を門へ向かって走る車は、閉じた門を見てもスピードを緩めない。 どころかますますスピードを上げると、そのまま鉄柵の門へと突っ込んだ。 大きな音を立て弾け飛ぶ門だった物を尻目に、バンパーに少しばかりの傷を付けた車は、慌てふためく警備員を嘲笑うかのように闇夜に消え去っていった。
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