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薄暗い室内に小さな音とともに明るくも目に優しい光量の電気が点る。
扉を開け中に入ってきた人物――ジュネは桜色の艶やかな口唇から吐息のような溜め息を零した。
濃い睫毛に縁取られた蒼穹のように鮮やかな蒼玉が何かを探すように室内を見渡す。
頭の動きに合わせて柔らかな金糸がさらりと舞った。
その左肩には鮮やかに咲く青薔薇の刺青。
手に持っていた食料の入った紙袋を手近な丸机に置き、更に奧へと足を進める。
小さなアパートの一室というにはあまりにも広いリビングを抜け、人が二人は通れる廊下を進み一番奧から二番目の扉の前に立つと、先ずは礼儀とばかりにそれなりの力でノックした。
返事はない。
今度は気にすることなく扉を開ける。
中は一段と暗く、だが所々で小さなランプの光が存在を主張していた。
羽音のような機械音が響く中を勝手知ったるように危なげない足取りで進むと、突き当たりにかけられていた布地を勢い良く引く。
闇を切り裂くように射し込んだ太陽の光に奧で丸まっていた塊が嫌がるように動いた。
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