THE END OF THE WORLD

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 ちょっとだけ恥ずかしかったが、その傘を持ったまま店内をぶらぶらし、5分前になるとデパートの前まで行った。 そこで街行く人を観察していると、約束の時間ちょうどに彼女が現れた。 「こんにちは」 「こんにちは。あら、それ…」彼女は僕の持っている傘に気付いて、驚きの表情を見せた。 「これ、さっきたまたま見付けて買っちゃいました。あの、どうぞ」 僕は彼女に、まるで花束を渡すかのように差し出した。 「まぁ、どうもありがとう。全く同じ物だわ」 「良かった」 「嬉しい。結構気に入ってたから、なくしてショックだったの」 彼女は満面の笑みで傘を抱き締めた。 「ねぇ、お昼ごはんまだでしょ」 「あ、はい」 「食べに行きましょ。お腹空いてる?」 「はい」 僕たちは人で溢れる通りを歩き出した。 「あの、それジャマですよね。僕、持ちますよ」 「いいえ、私が貰ったんだもの。私が持つわ」 「でも…」 「いいのよ、気をつかわなくて。持ってくれるなら、もっと重いものにして」 「わかりました」  5、6分歩いた所で彼女が立ち止まった。
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