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ぼーっと立っている僕を見て、カウンターにいるバイトの子が不思議そうに言った。
「どうしたの?」
「え?あ、別に…。ね、ここにいる女の人…」
「あぁ、マスターの奥さんよ」
「奥さん?」
話では、ちらっと聞いたことがある。一回りも下の、若くて綺麗な奥さんがいると。
でも実際見たのは今日が初めてだ。
「マスターは?」と聞くと、彼女は黙ってトイレを指差した。
奥さんは僕のことを知っていたのだろうか。きっとそうなのだろう。
「忘れ物はあったの?」
「うん」僕は何となくその場を離れがたかったが、ここにいる理由もないので店を出た。
それが彼女との初めての出会いだった。
僕は彼女の顔を何度も思い出しながら、雨のなか帰って行った。
次に会ったのも雨の日だった。
バイトを終えた僕は、その足で銀行に向かった。
用を済ませて出ようとしたら、出口に彼女が立っていた。
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