THE END OF THE WORLD

8/33
前へ
/105ページ
次へ
 たった数時間で、しかもちゃんと話をするのは初めてなのに、とてもリラックスした時間を過ごすことができた。高級なこのホテルの空気のせいかもしれない。 とにかく僕の笑顔は途切れることがなかった。 「あ、そうだ」 雨はすっかりあがっていた。僕は彼女をホテルに残して、ひとりで帰るところだった。 「傘…」 「傘?」彼女は僕を見送りに外まで来てくれていた。 「銀行に行くとき、傘持ったまま入ったほうがいいですよ。傘立てにカギがついてなかったら」 「えぇ、そうね。気を付けるわ」  僕はお茶代のお礼を言い、彼女は傘のお礼を言い、僕たちは笑顔で別れた。  3度目に会ったのは、彼女からの電話だった。 履歴書を見て、僕の携帯電話の番号を調べたのだという。彼女はしきりに謝っていたが、僕はむしろ嬉しかった。 また会いたいと言ってくれたのだ。もちろん快諾した。  次の日曜日、僕たちはデパートの前で待ち合わせをした。曇り空ではあったが、雨は降っていなかった。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加