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たった数時間で、しかもちゃんと話をするのは初めてなのに、とてもリラックスした時間を過ごすことができた。高級なこのホテルの空気のせいかもしれない。
とにかく僕の笑顔は途切れることがなかった。
「あ、そうだ」
雨はすっかりあがっていた。僕は彼女をホテルに残して、ひとりで帰るところだった。
「傘…」
「傘?」彼女は僕を見送りに外まで来てくれていた。
「銀行に行くとき、傘持ったまま入ったほうがいいですよ。傘立てにカギがついてなかったら」
「えぇ、そうね。気を付けるわ」
僕はお茶代のお礼を言い、彼女は傘のお礼を言い、僕たちは笑顔で別れた。
3度目に会ったのは、彼女からの電話だった。
履歴書を見て、僕の携帯電話の番号を調べたのだという。彼女はしきりに謝っていたが、僕はむしろ嬉しかった。
また会いたいと言ってくれたのだ。もちろん快諾した。
次の日曜日、僕たちはデパートの前で待ち合わせをした。曇り空ではあったが、雨は降っていなかった。
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