THE END OF THE WORLD

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 お昼前、街には多くの人が溢れていた。約束の時間より30分も早く着いてしまった僕は、とりあえずデパートの中で時間をつぶすことにした。  化粧品がずらりと並ぶ中を歩いて行くと、傘のコーナーがあった。 女物のカラフルな傘を見ていると、その中に、彼女が持っていたのとよく似た傘を発見した。 上品な薄紫のやつだ。 値段を見ると、傘にしては高価だが、手が出せない程ではなかったので、僕は思い切って買うことにした。 「プレゼントでよろしいですか?」店員が口元だけの笑顔で言った。 「あ、はい」 こんな長い傘でも包んでくれるのか。僕は初めて知った。今まで贈ったことも貰ったこともないので、包まれた傘など見たことがなかった。かわいいリボンでも付けるのだろうか。  包装された傘って何だか邪魔くさいかも、とふと思い、傘がどのようにプレゼント用にラッピングされるのかよく分からなかったが、店員が値札をはずしたところで 「あ、でもそのままでいいです」と言った。 「かしこまりました」口元だけの笑みを浮かべ、店員が精算をした。
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