【 退化 】

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   不気味に見つめる占い師に男は一瞬怯んだが、意味不明な言葉に対し問いただしたい衝動に駆られた男は、不気味な占い師から今すぐに逃げ出したい気持ちを、ぐっと抑えつけながら尋ねてみた。   「退化するとは?」    そんな男の問いに、占い師の黒いベールの中から、ふっと微笑を称える様な息の漏れる音がした。   「退化は退化、そのうち嫌でもわかる」    男が小首を傾げ、馬鹿馬鹿しいとばかりに頭を左右に勢い良くブンブンと振った後、家路へと再び足を向けるが占い師が男の背中越しに再び声をかける。   「誕生日おめでとう」    男は、驚き急ぐ足を止め占い師へと振り返ってみたが、占い師の姿は既にそこには無かった。    
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