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深夜12時1分。
デジタル時計がチカチカと、何年かぶりに私のねじを巻いていた。
お酒は、最近あまり飲まなくなった。
腫れぼったかった顔は次第に元に戻っていった。
「美羽。」
後ろから低く穏やかな声。
「ハッピーニューイヤー」
少しだけ頷いて見せた。
田端隼人と付き合い始めてまだ数週間。
初めて彼の家に泊まりに来た。
マンションの15階で夜景を見ながらワインなんて持って。
「座ったら?」
「うん。」
窓から見える景色が綺麗でついぼーっと見てしまった。
「外、寒そう。」
「ああ。」
リビングのソファに座ると彼も隣に座った。
どうしてこんなに落ち着くんだろう。
この人の隣は、なんだかとても安心する。
7年前、オランダで見知らぬ日本人と散歩をしたことを忘れていたわけではなかったのに。
深海の奥深くのような私の暗闇に見えた一筋の光だった。
いつかお礼を言いたいとずっと思っていた。
なのに、会えるわけないと信じ込んでいたせいでかなり待たせてしまった。
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