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それでも今、彼はこうして私の隣にいる。
「どうした?」
いつの間にか空になってしまったグラスに、新しいワインを注いでくれた。
「綺麗。」
「うん。」
「でもこれで‥」
グラスに軽く手を当て小さく首を振った。
「強いのに?」
「強くない。」
「俺よりは強いよ。」
少し不機嫌そうに、わざとワインをぐいっと飲んだ。
「ごめん。」
「全然強くないの。」
「うん。」
苦笑いの彼はとても暖かかった。
「なぁ‥」
「ん?」
「今度、弟に会ってほしいんだ。」
「うん。」
彼に弟がいることは以前何かで聞いた。
「いいかな?」
「もちろん。悠ちゃん?だっけ?」
ちゃん付けで呼ぶ私にまた笑う。
「そ、悠ちゃん。」
「どんな子?」
「可愛い子。」
ブラコンな事にはとっくに気づいていた。
「ふうん。」
「気持ち悪いって思ってるだろ?」
まさか、と首を振る。
どれくらい可愛い子なのか好奇心しか持っていない。
「最近、やっと心を開いてくれた気がするよ。」
「仲悪かったの?」
「いや、そういうんじゃないけどな。」
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