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○●○
季節は冬。
11月の東京は雪こそ降らないものの、コンクリートジャングルは身に染みるような寒さを放っていて、僕の身体はすっかり縮こまっていた。
「うわー……今日も寒いなぁ……」
学生服の上にコートを着込み、手袋をはめた僕は、玄関の引き戸を開けると同時に呟いた。
曇りの空が寒さを助長しているように見えて、余計に寒く感じる。
今日は一段と冷え込むって言ってたし、気温もそんなに上がらないんだろうなぁ……。
うちの学校、教室棟には暖房ついてないからな……一日コートを着込むことになるな。
「行ってきます」
家に向かって声を張ると、廊下に面した部屋から、手だけがにょきっと生えてきた。
ひらひらと揺れるそれには、見送りの言葉がついていた。
「いってらっしゃいな~」
全く……母さんってば、こたつから出られないって子供じゃあるまいし。
僕は微かに苦笑すると、引き戸を閉めて、歩き出した。
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