第1章

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学校までは徒歩で20分程度。大した距離ではないのだけれど、わずかな距離すら、この寒さの中では遠く感じてしまう。 「ぅあー、ホントに寒いなー……」 手袋をしていても手がかじかむし、耳の先なんか真っ赤になっているのが簡単に予想できる。 気持ち足早に歩いていると、前に見覚えのある黒髪が現れた。 曲がり角から、その艶やかな長い黒髪を揺らして現れたのは、間違いなく先輩だろう。 「へへっ」 朝から先輩に会えるなんて、今日はラッキーだ。 僕は笑みを抑えることが出来ず、にやにやとしたまま、先輩に駆け寄っていき―――― 「おはようございますっ!」 「きゃあっ!?」 思いっきり、後ろから抱きしめた。 一瞬悲鳴を上げる先輩だったが、正体が僕だとわかると、慌てたように声をあげた。 「ちょ、礼っ!? あなた何してるのよ!!」 「え、先輩、コートも着ないで寒くないかなと思って」 「ばッ……!? だ、だからっていきなり抱き着く人がどこにいるのよ! 離れなさい今すぐっ!」 「は、はい……すいません……」
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