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さ、さすがに少しやり過ぎたかな……。
反省して先輩から身体を離すと、振り返った先輩は顔を真っ赤にしていた。
「いきなり何てことするのよ! は、恥ずかしいじゃない!!」
「す、すいませんすいません!」
「(もう――……素直に離さないでよ……っ)」
「え? 何か言いましたか?」
「何でもないわよっ。いきなり抱き着いて来るような変質者にかける言葉なんかないわ」
うっ……! や、やっぱりいきなり抱き着いたのはまずかったかなぁ。先輩怒ってるよー……。
「れ、礼」
「うぅ……何ですか?」
かなりヘコみながら顔を上げると、寒さのせいだろうか、先輩が真っ赤な顔をして、僕の顔を見つめていた。
「て」
「て?」
「だ、だから……っ。て」
「いや、てって何ですか?」
素直に聞き返すと、先輩は焦れったそうな表情で頬を膨らませた。
「わ、私、今日手袋忘れちゃったのよ。おかげで手が寒いの。何とかしなさい」
見ると、先輩は確かに手袋を嵌めておらず、見るからにかじかんでとても寒そうだ。
僕は自分の手袋を外すと、それを先輩に向かって差し出した。
「はい、どうぞ。僕のなんかで良かったら、使ってください」
しかし、僕の対応は先輩が望んだものではなかったらしく、先輩は不機嫌そうに眉間にシワを寄せる。
「突然抱き着いてくる変質者のくせに、どうしてわからないのよっ」
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