プロローグ

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荒野を走り抜けるバイクが一台。 擦れ違うものはいない。 肌が日に焼けてやけに浅黒く、筋肉質な男が一人。 その後ろにヘルメットを被りながら、ひょろっとした端正な顔つきの優男が一人。 荒野に爆音だけを響かせながらもただ走る。 「ねえ、あれ何だろ」 突如として後ろの男が話しかける。 「あっ!?」 エンジンの唸る音で声が掻き消される。男は一旦、バイクを脇に止めた。 不服そうな顔をして後ろを振り返る。優男は気にせず言葉を紡ぐ。 「あれだよ。あれ」 指で指し示す。男は顔をしかめたままサングラスを外し、振り返る。目を細めた。 「……ただの霧じゃねえか」
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