76人が本棚に入れています
本棚に追加
荒野を走り抜けるバイクが一台。
擦れ違うものはいない。
肌が日に焼けてやけに浅黒く、筋肉質な男が一人。
その後ろにヘルメットを被りながら、ひょろっとした端正な顔つきの優男が一人。
荒野に爆音だけを響かせながらもただ走る。
「ねえ、あれ何だろ」
突如として後ろの男が話しかける。
「あっ!?」
エンジンの唸る音で声が掻き消される。男は一旦、バイクを脇に止めた。
不服そうな顔をして後ろを振り返る。優男は気にせず言葉を紡ぐ。
「あれだよ。あれ」
指で指し示す。男は顔をしかめたままサングラスを外し、振り返る。目を細めた。
「……ただの霧じゃねえか」
最初のコメントを投稿しよう!