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地平線上の彼方がわずかに靄がかかっているように見えた。
「でもさ、今は昼過ぎだよ。雨が降ったにしてもさあ、ちょっと霧が濃い気がするんだよね」
優男が肩をすくませて言う。スキンヘッドの男は顎をしゃくり上げながらも、少し思考する。
「……あの先はバラルの町だな。今回の任務と何か関係があるのかもしれない」
「任務?」
優男が軽く笑む。
「こんなの、ただのボランティアだよ」
男は顔をしかめる。だが諦めたかのように、サングランスをかけ直す。
「とにもかくも」
エンジンを唸らせた。
「行きゃあ、分かる」
乾いた熱い空気がやけに肌にはりつく。
「それもそうだね」
優男は静かに笑む。
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