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口の端を緩める。記憶が混乱する程に自分は飲み過ぎたのか。そう、途中からすっぽりと記憶が抜け落ちていた。もう一度、顔を拭う。頭痛が鳴り響く重い頭で瞼を開く。
(俺、ニッポンに帰ったか? 違う。飛行機が途中で故障して……。それで、どうなった?)
急に混乱していた頭がすっと現実に戻る。目の前一体には赤い血が広がっていた。生臭い血の匂いと共に、焦げ臭い匂いが同時に鼻につく。
反射的に立ち上がる。散らばっているガラスの破片が無機質に音を立てた。全身が痛んだが、そんな事は気にしていられない。目の前の大量の血は、すぐに機長のものだと判断した。
何故なら自分の眼前にビルの内部が確認できたからだ。もはや飛行機のコックピットは、その原型を激しく歪めていた。機長はビルへの衝撃で激しく頭をぶつけたのだろう。90度に曲げた首で頭部の半分は失っていた。
その身体の指先から伝って、大量の血が床下に広がっている。
虚しく警告ランプだけが点滅を繰り返していた。
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