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頭痛が激しく鳴り響く頭で、その人物を自分がよく知る人物だと認識すると安堵した。
「シン! 良かった。無事だったか」
その男はいつも通り憮然とした表情をする。
「……随分と遅かったな。これはどういう事だ?」
アザンが額から血を流しているにも関わらず、それを気にする事もなく冷静に言う。
「俺だって聞きたいさ。機体が故障したんだよ。……機長は死んだ。墜ちて生きていたんだ。それだけでも奇跡ってもんだろ。取りあえず、ここは危ない。すぐに脱出しよう」
リカもシンの後ろの座席に横たわっていた。意識を失っているのだろう。呼吸を繰り返す胸の浮き沈みで生きているという事を確認する。
シンは納得したように頷く。
「王女がいない」
「えっ?」
シンを見る。相変わらずこの男は表情を変えない。
辺りを見回す。何故か緊急用の出口が開いていた。声を発する前にシンがそれを遮る。
「わたしが目を覚ました時にはこれが、かけてあった」
シンが手に持つ物は王女が肩にかけてあったストールであった。
「おまけに、わたしの銃もない」
アザンは激しく顔を歪める。
(一体、何だってんだ……)
頭の頭痛が一層、激しく感じた。
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