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居間の扉を開けるとすぐに階段が見える。
扉の向こうで繰り広げられている騒がしい会話。
栄口は本日何度目かのため息をつき、その階段を上りはじめた。
「田島ー三橋ーご飯だよー」
未だ一家の末っこが寝ているであろう部屋のふすまを開ける。
「………………あれ?」
二人の布団はもぬけのカラ
ほんの10分程前は二人仲良く眠っていたはずなのに何処へいったのだろう。
トイレ?
……………には居ない。
下に降りた気配はしなかったからまだ二階に居るはずなのだが……。
「おっかしーなぁ……何処いっちゃったんだろ」
もしかしたら気付かない内に下に降りてたのかな………。
一回見てみよ。
首を傾げつつ先ほど上ってきた階段を降りる。
ん?
今なんか…………
苦しそうな声が………。
ふと、足下に下ろした視線を上げる。
「まさか………っ」
栄口は降りかけた階段を上り直し、奥の和室へと足を向けた。
半分開いてるふすまをいきおいよく開ける。
そこには探していた二人。
そして
その下には一家の大黒柱の姿があった。
***********
一家の問題児二名は、頭まで毛布を被ってまるくなっている花井の上に乗っかってユサユサ揺すっていた。
「はないーー!朝だぞ朝!!」
いくら幼稚園児と三歳児といえど、二人一緒に腹に乗られてはツラいのか
時折布団の中から「う゛ーー」と唸り声が聞こえてくる。
「お!栄口だ!もーメシできたのか!?」
ふすまを開けた栄口に気が付いた田島が声をあげる。
その下ではまだ唸り声が続いているが、田島はまったく気にしない様子だ。
「まったくもー………」
栄口は
何だか今日は朝からため息ばっかだなぁ……
と頭を抱えた。
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