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「おっ栄口おかえりー……って、三橋だけ?田島はー?」
居間の扉が開いたのに気が付き、テレビ画面から視線を外した水谷は後ろを振り返った。
そこには三橋を抱いた栄口。
お騒がせなソバカスの姿が見えない。
三橋は、というと腕に抱かれたまま水谷の向こうを見つめていた。
視線の先。
テレビの中では未だヒーロー達が敵と戦っている。
敵が巨大化しているから、そろそろクライマックスだろうか。
栄口がふと視線を落とすと
三橋だけでなく、あんなに騒いでいた泉も真剣になってヒーロー達の戦いを見つめていた。
大人ぶってもまだ小学生だなぁ、と栄口は微笑ましく思う。
「田島ならそろそろ………あっほら来た」
階段を降りてきた花井の肩には田島の姿。
どうやら根負けしたらしい。
「ありゃりゃ……田島結局おりなかったの?」
苦笑まじりで聞くと花井はハァー……と長いため息をついた。
「あぁ…、ったく…おれぁなんで朝からこんなに疲れてんだ…?」
田島はそんな花井の顔を上から覗きこむ。
「イチバンねぼーしたくせになさけねぇぞー花井!!」
「誰のせいだっ誰の!!」
「あれー?花井も起きてきたんだっ」
水谷は一緒に降りてきた二人をみて意外そうな顔した。
いつもだったら花井は全員が起きる前に仕事に行ってしまうし、
休日は疲れて昼前まで寝ていることが多いのだ。
「こいつらに起こされちまったんだよ!!」
花井は少しウンザリした顔で一向に降りようとしない田島を見上げた。
そんな花井におかまいなしで、田島は目の前の水谷にニカッと笑いかける。
「おっ!水谷だ!はよー!!」
「おはよっ田島!今日はみんな勢揃いだねー」
水谷が久しぶりじゃない?と栄口にきくと、後ろに居た阿部がテレビから視線を外さずに口を出した。
「いつもは誰かさんが昼すぎまで寝てるからな」
「ぐ……」
このままだとまた一騒ぎありそうだと思い、栄口は会話を遮った。
「あーもう!みんなっご飯にするから席につくっ!!」
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