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栄口の言葉に
「へーーぃ」
と各々自分の指定の位置につく。
西浦家は基本和風のつくりなので椅子ではなく座布団だ。
田島はひょいと花井の肩から飛び降りて自分の定位置につくと、敷いてあった座布団を二つ折りにした。
普通に座っては机の高さが高すぎて座高が足りないのだ。
その上にポンと座ると「はやくー!」と栄口を急かす。
わかったわかった、と騒ぐ田島をなだめて栄口は台所へ向かう。
が、ふと気付いたように立ち止まって、座っている阿部を振り返った。
「あ、阿部!悪いけど三橋よろしくっ!オレ味噌汁とかよそわなきゃいけないからさ」
「は!?なんでオレが……」
栄口は問答無用の笑顔で「はいっ」と三橋を阿部に預けると台所へと姿を消した。
三橋は、栄口の腕からいきなり阿部の膝に移ったのでかなりキョドキョドしている。
「あれ、今日は阿部がお膝係?」
「ほんとだーっ昨日は水谷だったもんね」
そういって西広と冲は「おはよー」と脇から三橋の顔を覗き込む。
「……そうだっけ?もう今日も水谷でよくねェ?」
阿部はそういうと机を挟んで向かい側にいる水谷をいちべつする。
「ぇ……っえぇっ!?なんでオレ睨まれてんの!!?オレなんかした!?ちょっと!」
騒ぐ水谷を無視してそのまま視線を移すと、田島が三橋を見つめたままで言った。
「なー阿部ー三橋怖がってんぞー」
田島の言葉に顔を覗き込むと、三橋は阿部に嫌がられているのだと思ったのか既に半泣きでぐすぐすいっていた。
「だーもーー…っ!別に嫌じゃねェって!!」
阿部の大声にビクゥッとなった三橋は、小さい体を更に小さくして必死に涙を溜めている。
その様子に田島は「あー!」と声を出して阿部を見た。
「阿部がまた三橋泣かせたー!」
いけないんだー!と笑いながら指をさしてくる田島に「オレかよ!!」と少し慌てる阿部。
そんな阿部を見て、泉は頬杖をつきながら言った。
「阿部はいちいち声がでっけーんだよ」
「はぁ!?別にでかくねーだろ!」
それがでかいっつーの、と泉がため息をついていると、栄口と巣山が全員分の味噌汁をもってきた。
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