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「はいっみんなお待たせー!今日の味噌汁はねー」
「「豆腐と大根とあぶらあげ!!」」
栄口が言う前に水谷と田島が声を揃えた。
その内容が味噌汁の中身だということに一瞬遅れて気付いた栄口は、少し引きながら苦笑する。
「よ、よく分かったね」
「えへへーっオレこの味噌汁が一番好きなんだー」
「オレもっオレもっ!」
ニカーッと笑う田島の横では、阿部に抱えられた三橋が目をキラッキラさせて首を縦にふっている。
好きだからって匂いだけで具までわかるもんなのか……?
みんな声には出さないが怪訝そうな顔をして味噌汁の話に花を咲かせる田島と水谷、三橋を含め三人を見ていた。
「そ、そりゃ良かったっ!じゃー……用意も出来た事だし、食べよっか!」
それを合図に手伝いを終えた巣山も席につき、全員できちんと手を合わせる。
テーブルの上にはご飯、味噌汁、ハムエッグ、ほうれん草のお浸し、他に数種類の漬物が綺麗に並べられていて、
それを前にした子供達は、今か今かと待ちきれない様子で花井を見つめた。
花井は9人の視線を受けて一瞬うろたえるが、意を決したように息を吐く。
「いただきますっ!」
「いただきまーすっ!!」
花井が言うと全員後に続く。
「冲、醤油とって」
「んー」
「あっ!ずっりー!!水谷のハムエッグのがでっけぇぞ!」
「そ、そんなことないって」
「じゃあこーかんしよーぜ!」
「や、やだ!」
「でかくないなら別にいーじゃんかー!」
「三橋てっめ!よそ見すんな!こぼれんだろっ」
「う ぉっ」
「あーあー、言ってるそばから……」
「あ、オレのやつ半熟だ」
「いーなぁオレのちょっと固くなってるよ」
「交換する?別にオレどっちでも好きだし……はいっ」
「ほんと!?ありがとうっ」
「す、巣山は大人だぁあ」
「ほんと誰かさんとは大違いだな」
「……………」
「あぁああっ!!ちょっ田島!それオレのハムっ!!」
「まぁまぁ水谷、いーじゃん卵でかいんだから」
「ハムなかったらハムエッグじゃないじゃんさ!!オレのハムーーーっ」
「あーもーっ!オレのやるからちょっと黙っとけ!!」
「マジで!?やたーっさっすが花井ぃっ」
「……………」
食事に集中していた一同だが、その時だけは阿部の一言に無言でうなずいた。
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