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「あの馬鹿が課題終わんねーっつーから仕方なくみてやってたんだよ」
「馬鹿」の部分に力が込められていた気がしたが、栄口は気にする風もなく阿部の言葉に目を丸くする。
「うっわ……珍しいこともあるもんだね阿部が水谷に勉強教えるなんて」
「アイツのせいでコッチまで迷惑被るのはゴメンだからな……。
そのくせあの野郎……途中で居眠りするは人が予習やってんのに邪魔してくるは……!!
お陰さまでオレの勉強が終わったのは3時だ。
なぁ…ク・ソ・レ・フ・ト?」
いまいまし気に言い放つと、再度眠りの世界へ旅立とうとしている水谷の頭を踏みつけた。
「ぐぇっ!!……な、な、なにすんだよ阿部ぇ!!」
さすがに参ったのか慌てて飛び起きた水谷は涙目になっていた。
「てめぇさっさと起きろってんだろこの馬鹿」
「だからっていきなり踏むことないじゃんか!!」
必死に抗議する水谷だがそんな様子を一層冷ややかな目で見た阿部は口だけ笑っていった。
「………昨日人の勉強邪魔して挙句の果てに課題ほって寝たのは何処の誰だったろうなぁ……水谷?」
にっこりとした笑顔の下にあるあきらかな怒気。
それをみてとった栄口はそぉっと水谷に視線を移した。
(うわ……阿部かなりキレてるな……)
だが水谷も馬鹿ではないらしい。
「ゴメンナサイ」
阿部を怒らせたらなにをされるか分かったもんじゃない!
水谷は日頃の経験から判断し、バッチリ土下座つきで謝った。
すると栄口がポンポンと手を叩いた。
「ほら、二人とも顔洗って!さっさとご飯食べる!!」
「「うーーぃ」」
水谷もようやく布団からはいだし、阿部につづいて部屋をでる。
栄口はその様子を見送った後息をついた。
「さ、次いこっと!」
そういって次の部屋へと向かった。
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