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ふと目が覚めて周りを見ると、隣でふわふわとした薄茶の髪が揺れていた。
窓から入ってきた初夏の風。
それに頬を撫でられて目を覚ました田島はキョロキョロと辺りを見た。
いつも隣で寝ているはずの栄口がいないのをみてとって、まだ夢の中にいるであろう薄茶の髪を揺すった。
「みはしーおきろー」
だが三橋は「むー」とうなって更に毛布へくるまってしまう。
自分ももう少し寝ていようかとも思ったが、栄口がいないということはそろそろ朝ご飯の時間だ。
それに今日は日曜日。
こんなに良い天気なのに寝ているなんてもったいない。
そう思い、再度三橋を起こしにかかる。
「みはしーみはしってばーっおーきろー」
かなりの勢いで揺するとやっとうっすら目を開けた。
髪の毛と同じ薄茶の瞳を覗きこんで
「起きたかー?」
と聞いてやるとごしごしと目を擦りながら小さく頷いた。
「よっしゃ」
それをみて田島は満足そうにニカッと笑う。
つられて笑った後、三橋はキョドキョドと周りを見回した。
「栄口ならメシ作ってるぞー。ほら、みそしるの匂いする」
階下からのかぎなれた香りについつい笑顔がこぼれてしまう。
「きっとこれトウフとダイコンと……あぶらあげだな!!」
三橋も田島の台詞に目を輝かせてコクコクと頷いた。
水谷といいこの二人といい
かなりの嗅覚だ。
「なっ!はやく行こーぜ!」
田島が手を握って三橋を立たせると寝癖もそのままに匂いの元へと向かった。
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